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ホームローンが破綻し任意売却になったケース

2018.0710

 世田谷区の賃貸マンションに住む、結婚して2年目の子供のいない松川さん(仮名)、30才。平成11年4月に新聞チラシで「今の家賃で自分の家がもてますよ!!」という広告を見た奥さんが「ねえ、日曜日に見に行かない?」と冗談半分で言ったことからこの話が始まりました。

 

 半年後に川崎市北部の住宅街「新百合ヶ丘」に3,200万円で68m2のマンションを購入しました。頭金ゼロで、すべて借金です。諸費用を含めて総額3,600万円となりました。奥さんは、ある会社で正社員として働き、年収が200万円以上あります。ご夫婦の合計年収は約600万円。購入したマンションは共有名義で、松川さんが3分の2、奥さんが3分の1の持分です。すべて「行け行けの業者」に任せ、お二人は言われるままにハンコを押しただけです。

 

 住宅ローンは月々8万円で、ボーナス時に32万円。新居へ引っ越す際に、カーテンや家具、電気製品を新調した、いわゆる引っ越し貧乏です。これら新調した家財の月々の返済が約4万円です。

 

 30才という若さで持ち家と得て、他人がみたらスゴイと感じたことでしょう。2人とも返済など気にすることなく快適と思われる生活が始まりました。

 

 しかし、年額約150万円の住宅ローンと管理費24万円、固定資産税12万円、それに加えて他のローンが約50万円と、1年間で約240万円の返済をしなくてはなりません。

 

 このご夫婦の悲劇は、このときすでに始まっていました。マンションを買って初めてのお正月を迎え、そして2月になるとボーナス月の32万円の返済、3月には不動産取得税20万円の請求が来て、2人は結婚して初めて、そして人生で初めてお金による「追い込み」をかけられたのです。

 

 6月には奥さんの妊娠がわかり、嬉しいはずなのに率直に喜べない状況になっていました。一息つくと襲ってくる次の「ボーナス返済」。12月にボーナスをもらっても、2月のボーナス返済のために使えません。固定資産税の12万円も大変です。

 

 子供が生まれる1か月前まで大きなお腹で働いていた奥さんも、出産のために退社せざるをえませんでした。子供が生まれてからは、奥さんは育児と住宅ローン返済でストレスが溜まりだしました。実家が2人とも東北で、両親が手伝いに来るには遠すぎます。

 

 そして、カードローンのキャッシングが始まり、次にサラ金です。楽しいはずのマイホーム生活が一転して地獄です。子供が2才になる前に松川さんの収入ではどうにもならなくなりました。「金の切れ目が・・・」ではありませんが、奥さんの気持ちも、どうにもならなくなってきてしまったそうです。

 

 平成15年1月に協議離婚をして、奥さんは子供を連れて宮城の実家に帰ってしまいました。松川さんは転職し、トラックの運転手、そしてクレーンのオペレーターになりました。

 

 そして、破産を決意。私たちは弁護士の依頼で松川さんのマンションを訪れました。玄関を入り廊下を歩いても、生活感はまったくありません。3LDKのマンションで松川さんの一人暮らしです。3つの部屋は使われておらず、LDKで寝起きをしているとのことですが、それでも広すぎるくらいです。奥さんが家財道具や家具のほとんどを持って行ったようでした。

 

 クリーニングをすればすぐにでも売却可能です。奥さんにも連絡をして専任媒介契約書に押印をしてもらい、販売活動に入りました。むろん、奥さんには残債務返済の請求がくることを伝えました。マンションの売却価格は1,480万円でした。

 

 このように、初めから返済の難しいことが分からず、「行け行けの不動産業者」の言われるままに購入して、破産まで至る人も少なくありません。松川さんは自己破産をし、奥さんは連帯債務者となりました。一時の夢としては高くついたものです。

 この松川さんは、任意売却後に残った債務の支払いを、債権者側に月々1万円の返済をしていくことで合意してもらえました。

この記事を書いた人

小嶋 奈津美エージェント

小嶋 奈津美 エージェント

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